「じゃらんや楽天トラベルからの予約ばかりで、手数料が経営を圧迫している」「自社ホームページからの直接予約を増やしたいが、やり方が分からない」——旅館の経営者から最もよく聞くお悩みです。
OTA(オンライン旅行代理店)は集客力が高い一方、予約1件あたりの手数料は10〜15%に達し、売上が増えても利益率が上がらないという構造的な課題があります。さらに、旅行者の情報収集行動はSNSやGoogleマップへと多様化し、OTAだけに頼る集客では取りこぼしが生まれる時代になりました。
この記事では、旅館のマーケティング戦略を「Web施策」「コンテンツ施策」「販促施策」の3つの柱に整理し、OTA依存度を下げながら自社予約を増やす具体的な方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
旅館のマーケティングが今、必要な理由
OTA依存のリスクと手数料の負担
じゃらん、楽天トラベル、Booking.comなどのOTAは、旅館にとって欠かせない集客チャネルです。しかし、予約手数料は売上の10〜15%に達するため、OTA経由の予約が増えるほど利益率は低下します。
さらに、OTAに依存した集客構造では、OTA側のアルゴリズム変更や掲載条件の変更に振り回されるリスクもあります。自社でコントロールできる集客チャネルを持つことが、安定経営の鍵です。
旅行者の情報収集行動の変化
かつて旅行者はOTAで検索して予約するのが一般的でしたが、現在はInstagramで「行きたい旅館」を探し、Googleマップで口コミを確認し、YouTubeで客室や食事の動画をチェックしてから予約する——というマルチチャネルの情報収集が主流です。SNSやGoogleでの「発見」から自社サイトへ誘導し、直接予約につなげる導線設計が求められています。
インバウンド需要の回復と新たなチャンス
訪日外国人旅行者数は過去最高水準で推移しており、「日本の伝統的な旅館に泊まりたい」というニーズは年々高まっています。インバウンド客は直接予約やBooking.com経由が多く、自社サイトの多言語化や海外向けSNS発信が新たな集客チャンスになります。
『デジタル・マーケティング超入門』の著者が
「Web集客の仕組み」で売上を創ります
旅館マーケティングの全体像|まず押さえるべき3つの柱

旅館のマーケティングでは、大きく「Web施策(集客)」「コンテンツ施策(ブランディング)」「販促施策(売上最大化)」の3つの柱に分けて考えると、取り組むべき施策を整理しやすくなります。
Web施策(集客)
新規のお客様に旅館を見つけてもらい、宿泊予約につなげるための施策です。自社ホームページの強化やMEO、SNS、Web広告、メルマガ・LINEなどを活用し、旅館を知ってもらう機会を増やします。
コンテンツ施策(ブランディング)
旅館ならではの魅力や特徴を伝え、「ここに泊まりたい」と思ってもらうための施策です。ブログや動画、宿泊者の口コミ、UGC(ユーザー投稿)などを活用し、施設や料理、温泉、周辺観光などの魅力を発信します。
販促施策(売上最大化)
閑散期の稼働率向上や客単価アップを目的とした施策です。季節限定の宿泊プランや地域の観光施設との連携、館内イベントなどを企画し、宿泊需要の創出や付加価値の向上につなげます。
この3つの柱を意識しながら、集客・ブランディング・売上向上の施策をバランスよく実行することが、旅館マーケティングを成功させるポイントです。
関連記事:デジタルマーケティングとSNSマーケティングの違いは?5つの観点から違いを比較解説
【自社予約を増やす】Web施策5選
自社ホームページの強化(予約導線・写真・SEO)
自社予約を増やすための第一歩は、ホームページの改善です。特に重要なのが「予約への導線」「写真のクオリティ」「SEO対策」の3点です。
- 予約導線: すべてのページから1クリックで予約フォームに到達できるようにする。スマートフォンでは画面下部に「予約する」ボタンを常時表示するのが効果的
- 写真: 客室、食事、温泉、外観の高品質な写真はお客様の予約決定を左右する最大の要因。プロのカメラマンによる撮影は投資として十分に回収できる
- SEO: 「地域名+旅館」「地域名+温泉宿」のキーワードで上位表示を狙う。宿の魅力を伝えるブログ記事を定期的に公開することも効果的
Googleビジネスプロフィール(MEO対策)
「○○温泉 旅館」と検索したとき、Googleマップに表示されるかどうかは来館数に直結します。Googleビジネスプロフィールに最新の写真を20枚以上登録し、料金情報、設備、アクセス方法を充実させましょう。口コミへの丁寧な返信もGoogleの評価を高める重要な要素です。
SNS運用(Instagram・YouTube)
旅館のSNSはInstagramとYouTubeが最も効果的です。
Instagramでは、季節の料理、客室からの眺望、温泉の湯気が立ち上る写真など、「泊まりたい!」と思わせるビジュアルコンテンツを発信しましょう。リール動画で館内を案内する「バーチャル見学」も人気です。ハッシュタグは「#○○温泉」「#旅館ステイ」「#温泉旅行」のように、旅行者が実際に検索するタグを使います。
YouTubeでは、客室紹介、食事の紹介、周辺観光スポットの案内など、長尺で旅館の魅力を深く伝えるコンテンツが資産になります。一度公開した動画は長期間にわたり検索から視聴され続けるため、コスパの高い施策です。
Web広告(リスティング広告・メタサーチ広告)
短期的に自社予約を増やしたい場合は、Web広告が有効です。Google広告で「○○温泉 旅館 直接予約」のようなキーワードに出稿すれば、OTA経由ではなく自社サイトへ直接誘導できます。
また、Googleホテル広告やTripadvisor、トリバゴなどのメタサーチ(宿泊料金比較)サイトに自社プランを掲載し、「公式サイト最安値」で訴求する方法も効果的です。OTAの手数料(10〜15%)よりもメタサーチの広告費(数%)のほうが安いケースが多いため、利益率改善につながります。
メールマガジン・LINE公式アカウント
一度宿泊いただいたお客様にリピートしてもらうための施策です。宿泊後のお礼メールに次回使えるクーポンを添付したり、LINE公式アカウントで季節の便りや限定プランを配信したりすることで、「また行きたい」という気持ちを引き出します。
リピーターは広告費ゼロで予約してくれる最も利益率の高いお客様です。新規集客と同じくらい、リピーター施策にも力を入れましょう。
関連記事:広告代理店の費用相場は?選び方や手数料を抑えるポイントも解説
【ブランド力を高める】コンテンツ施策3選

ブログ・コラムで「体験ストーリー」を発信する
「秋の紅葉が見える露天風呂」「地元漁港から届く朝獲れの刺身」「女将がこだわる季節の花の活け方」——旅館には、他のどの宿泊施設にもない唯一無二のストーリーがあります。ブログでこうした体験の物語を発信すれば、「泊まってみたい」の動機をつくると同時に、「地域名+旅館」のSEO対策にもなります。
動画コンテンツで旅館の世界観を伝える
写真だけでは伝えきれない「音」と「動き」を届けるのが動画の強みです。川のせせらぎが聞こえる客室、湯気が立ち上る温泉、料理が目の前で仕上がる演出——これらをYouTubeやInstagramリールで発信すると、お客様の期待値が格段に上がります。スマートフォンで撮影した短い動画で十分。大切なのは「ここにしかない空気感」を伝えることです。
口コミ・UGCを活用した信頼構築
宿泊後のお客様に「Googleの口コミにご感想をお願いできますか」と丁寧に依頼し、口コミを増やしましょう。お客様がInstagramに投稿してくれた写真(UGC)は、許可を得たうえで自社アカウントでリポストすれば、信頼性の高いコンテンツとして活用できます。第三者の声は、どんな自社宣伝よりも説得力があります。
【閑散期を乗り越える】販促施策2選
宿泊プランの企画|ターゲットと季節に合わせた設計
閑散期の稼働率を上げるには、「この時期だからこそ泊まりたい理由」を作るプラン設計が有効です。
- 平日限定のワーケーションプラン(Wi-Fi完備・連泊割引)
- 記念日・アニバーサリープラン(ケーキ・花束付き)
- 一人旅歓迎プラン(1名利用可・おひとりさま特典)
- 地元食材を堪能する季節限定グルメプラン
ポイントは「価格を下げる」のではなく「付加価値をつけて、特定のターゲットに刺さるプラン」にすることです。値下げは利益率を下げるだけでなく、旅館のブランドイメージも毀損するリスクがあります。
地域連携・イベントで新しい来館動機を作る
地域の観光協会、飲食店、体験事業者と連携して「宿泊+体験」のパッケージを企画すれば、旅館単体では作れない新しい来館動機が生まれます。地酒の酒蔵見学ツアー、里山ハイキング、陶芸体験付き宿泊など、「この旅館に泊まるからこそできる体験」が差別化のカギです。
インバウンド対策|外国人旅行者を取り込む3つのポイント
インバウンド需要を取り込むには、外国人旅行者が旅館を「見つける・比較する・予約する」までの流れを意識した情報発信が重要です。特に、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
自社ホームページを多言語化する
外国人旅行者が安心して予約できるよう、自社ホームページの多言語化を進めましょう。最低限、英語ページを用意し、ターゲットとする国や地域に応じて中国語・韓国語などにも対応します。
海外OTAを活用する
Booking.comやAgoda、Trip.comなど、海外ユーザーの利用が多いOTAへの掲載も重要です。施設情報や宿泊プランを充実させるだけでなく、外国語で投稿された口コミに英語で返信することで、海外のお客様からの信頼獲得につながります。
Instagramで海外向けに情報を発信する
Instagramでは、日本語だけでなく英語のキャプションを併記し、「#JapaneseRyokan」「#Onsen」「#TraditionalJapan」など海外ユーザーが検索するハッシュタグを活用しましょう。写真や動画を通じて、旅館ならではの体験を視覚的に伝えることがポイントです。
外国人旅行者にとって、畳の部屋や浴衣、懐石料理、温泉といった「日本ならではの体験」は大きな魅力です。日本人にとっては日常的なものでも、海外のお客様にとっては特別な価値になるため、その魅力を外国語で分かりやすく発信することで、新たな集客につなげられます。
よくある質問(FAQ)
Q. OTAをやめて自社予約だけにすべきですか?
A. いいえ、OTAは強力な集客チャネルなので「やめる」のではなく「依存度を下げる」のが正解です。理想はOTA経由と自社予約の比率を5:5〜4:6に持っていくことです。OTAで認知を広げ、自社サイトで直接予約を促す導線を作りましょう。
Q. マーケティングにかける予算の目安は?
A. 宿泊売上の3〜5%がマーケティング予算の一般的な目安です。まずはGoogleビジネスプロフィール(無料)とInstagram(無料)から始め、効果が見えてきたらWeb広告やホームページ改善に投資を拡大するのがおすすめです。
Q. SNSは誰が運用すべきですか?
A. 最も効果的なのは「女将やスタッフが日常を発信し、写真のクオリティは外部に相談する」ハイブリッド型です。旅館のSNSは「人」の温かさが最大の武器。完璧な写真よりも、旅館で働く人の息づかいが感じられる投稿がフォロワーの心をつかみます。
Q. 小規模旅館でもマーケティングは必要ですか?
A. はい、小規模旅館だからこそマーケティングが重要です。大規模施設のような価格勝負はできないため、「ここにしかない体験」を適切に発信し、価値を理解してくれるお客様に届けることが生命線になります。むしろ小規模旅館のほうが個性を打ち出しやすく、SNSとの相性は良い傾向にあります。
まとめ|旅館のマーケティングは「OTA+自社」の最適バランスを見つけること
旅館のマーケティングで最も大切なのは、OTAを完全に排除するのではなく、「OTA+自社チャネル」の最適バランスを見つけることです。OTAで幅広い認知を獲得しながら、自社ホームページ・SNS・Googleマップ・リピーター施策で直接予約の比率を少しずつ高めていく——この「ハイブリッド戦略」が、利益率と稼働率の両立を実現します。
まずはGoogleビジネスプロフィールの充実とInstagramの開設から始め、自社ホームページの予約導線を整備しましょう。小さな一歩ですが、続けることでOTA依存度は確実に下がっていきます。
吉和の森では、旅館・ホテルのWeb集客を、ホームページ制作・SNS運用・SEO対策までトータルでサポートしています。「OTA依存から脱却したい」「自社予約を増やすマーケティングを始めたい」というご相談も、お気軽にどうぞ。
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