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資産運用・投資にかかる5つの税金とは?仕組みや確定申告が必要な場合、節税する方法を解説

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資産運用・投資にかかる5つの税金とは?仕組みや確定申告が必要な場合、節税する方法を解説

資産運用や投資で生じる主な5つの税金について解説します。税金の種類や確定申告の有無、税金を非課税にする制度や少なく抑える節税方法なども併せてご紹介します。資産運用における税金の種類や節税を学んで賢く納税しましょう!

私たちが税金と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは給与の所得税でしょう。しかし、給与だけでなく不動産所得、雑所得、譲渡所得など所得にはさまざまな種類があります。また、条件によっては非課税になるものもあり、節税のためには勉強も必要です。本稿では、資産運用に関する税金をケースバイケースで紹介します。

 

資産運用で利益が出ると税金はかかりますか?

 

資産運用で利益が出ると税金はかかりますか?

 

資産運用には預貯金・株式・投資信託・不動産投資などさまざまな方法がありますが、資産運用によって利益が生じた場合には、原則として税金を払う必要があります。

 

厳密には、資産運用に充当した金額に対してではなく、資産運用によって増えた利益の金額に対して税金がかかります

 

利益に対して課される税金は、基本的には20.315%です。なお、税金や税率の内訳は以下のとおりです。

 

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%

 

たとえば、資産運用によって10万円の利益が発生した場合、約2万円が税金として差し引かれます。利益がなく損失が出た状態、つまりマイナスの状態であれば、税金はかかりません。

 

そのため、資産運用においては損失を被るリスクもありますが、リターンとして利益が得られた場合には税金が発生することも念頭に置いておく必要があるでしょう。

 

このような預貯金・株式・投資信託などの金融商品から得られた所得にかかる税金のことを「金融所得課税」といいます。

 

預貯金であれば利子、株式や投資信託であれば配当金や売却益などが課税対象です。

 

総務省が「金融所得課税について」で公表しているとおり、これらの金融所得課税には3つの課税方法があります。

 

  • 総合課税(各種の所得金額を合計した総所得金額に課税する方法)
  • 申告分離課税(他の所得金額とは分離して税額を計算する方法)
  • 申告不要

 

金融所得課税の種類や仕組みについて詳しくみていきましょう。

 

資産運用でかかる5つの税金【確定申告が必要なケースも解説】

 

資産運用でかかる5つの税金【確定申告が必要なケースも解説】

 

税法上、所得は10種類(給与・事業・利子・配当・譲渡・不動産・一時・退職・山林・雑)に分類されます。

 

そのうち、資産運用に関連する所得として、以下の所得が挙げられます。

 

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

 

資産運用に関連する所得の種類によって課税対象や税率が変わる可能性があるので、種類ごとの税金やその仕組みを正確に理解しておくことが大切です。

 

ここでは、資産運用で得られる所得の種類や確定申告の有無について詳しくみていきましょう。

 

資産運用でかかる税金①利子所得

 

「利子所得」とは、預貯金や公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金などによる所得のことです。

 

利子所得は基本的には課税対象であり、20.315%の税金がかかりますが、受け取るときには源泉徴収によってすでにその税金が差し引かれていることから確定申告は不要です

 

これは、利息を支払う金融機関が税金を事前に徴収することで、利子所得に対する税金を納めたことを意味する「申告分離課税制度」の適用対象だからです。

 

したがって、運用している投資家は源泉徴収によって税金がすでに差し引かれている状態で利子を受け取っているため、改めて確定申告をする必要はありません。

 

なお、基本的には源泉徴収される利子所得には、利息に税金がかからない非課税制度もあります。それは、以下のような場合です。

 

  • 財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄を行っている場合
  • 身体障害者手帳や遺族年金を受けている場合

 

「財形住宅貯蓄」や「財形年金貯蓄」を勤務先で行っている場合は、両方の貯蓄の元本合計額が550万円までの利子については非課税となります。

 

また、国内に住所を有する個人で「身体障害者手帳の交付を受けている人」や「遺族年金を受け取れる妻である人」などの一定条件を満たす場合、預貯金や公社債などの元本額が350万円までの利子については非課税となります。

 

このように、一般的には利子所得は申告分離課税の対象であることから確定申告の必要はありませんが、非課税制度を利用できる場合に限ると利益はそのままの金額で考えることが可能です。

 

資産運用でかかる税金②配当所得

 

株式投資では、投資先企業の業績により、企業が儲けた利益の一部を株主へ配当金として支払われる場合があります。

 

また、投資信託では運用によって得られた収益が決算ごとに投資家に分配されることがあります。

 

このように、「配当所得」とは、株式の配当金や投資信託の収益分配金などで得られる所得のことです。

 

配当所得は課税対象であり、20.315%の税金がかかります。(ただし、非上場株式の場合は、所得税20%と復興特別所得税0.42%の計20.42%が源泉徴収されます)

 

基本的に支払われる際には源泉徴収によってすでに所得税や住民税が差し引かれていることから確定申告は不要です。

 

ただし、「配当控除」を利用する場合は総合課税制度の適用対象となり、確定申告が必要となります。

 

「配当控除」とは、配当所得がある際に総合課税で確定申告をすることで、一定の金額を税額から控除してくれる制度です。

 

そもそも配当金は、株式を発行する法人に対して法人税が課されたうえで、余ったお金を株主に分配する制度です。

 

すでに法人税が課せられている配当金を受け取った株主に対して、さらに所得税や住民税が課せられると二重課税になってしまいます。

 

配当控除は、このような二重課税を避けるために設けられました。

 

配当控除を受けられる主な配当所得は、日本国内に本店のある法人から受け取る以下の配当金や分配金です。

 

  • 剰余金の配当
  • 利益の配当
  • 剰余金の分配
  • 金銭の分配
  • 証券投資信託の収益の分配

 

配当控除を利用する場合は、配当所得は総合課税の対象で確定申告が必要となるため、他の所得金額と合算された金額に一定の税率をかけて総合課税額を算出します。

 

資産運用でかかる税金③譲渡所得

 

株式や投資信託を売却した際に生じた利益は「譲渡所得」であり、課税対象です。

 

「譲渡所得」は、他の所得とは別で納税する「申告分離課税」が適用され、税率は20.315%です。

 

ただし、証券口座の種類によって納税方法や確定申告の有無が異なります。

 

  • 特定口座・源泉徴収あり:確定申告は不要
  • 特定口座・源泉徴収なし:年間取引報告書をもとに確定申告が必要
  • 一般口座・源泉徴収なし:確定申告が必要

 

証券口座が「特定口座・源泉徴収あり」の場合、源泉徴収されるため、確定申告は不要です。

 

しかし、「特定口座あるいは一般口座・源泉徴収なし」の場合、確定申告をして納税する必要があります。

 

源泉徴収がない場合は特定口座でも一般口座でも確定申告が必要ですが、「特定口座・源泉徴収なし」の場合には1年間の株式や投資信託の取引における損益をまとめた「年間取引報告書」を証券会社が作成してくれるため、確定申告がスムーズにできます。

 

資産運用でかかる税金④一時所得

 

「一時所得」とは、営利目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得のことです。

 

その名のとおり、スポットで得られる一時的な臨時収入であり、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない特徴があります。

 

具体的には、以下のようなものが該当します。

 

  • 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
  • 懸賞や福引きの賞金品
  • 競馬や競輪の払戻金
  • 事業による収益
  • 法人から贈与された金品

 

給与所得者の一時所得が20万円以下の場合、確定申告は原則不要です。

 

資産運用でかかる税金⑤雑所得

 

「雑所得」とは、10種類の所得(利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時)のいずれにも該当しない所得のことです。

 

代表的な例としては、以下のものが挙げられます。

 

  • 暗号資産や仮想通貨、FXでの収入
  • ネットショップでの収入
  • ネット広告やアフィリエイトでの収入
  • 原稿料・講演料

 

給与所得を受け取っている場合は、雑所得を含めたその他の収入が年間20万円以下の場合は確定申告が不要ですが、年間20万円を超えた場合は確定申告が必要です

 

雑所得の所得税額は、他の所得と合算した総所得金額に対して税率をかけて算出する「総合課税」であり、総所得金額によって5%から45%と税率が変動します。

 

資産運用で税金かからない方法3選

 

資産運用で税金かからない方法3選

 

資産運用において、資産を増やすことが最大の目的と考えられます。

 

資産運用によって利益が出ても、税金はなるべく少なくしたいと考える方も少なくないでしょう。

 

そこで、資産を少しでも増やすためにも、利益にかかる税金を最小限に抑えることが重要です。

 

ここでは税金対策として活用できる節税方法を紹介します。

 

資産運用における主な税金対策としては、以下の3つが挙げられます。

 

  • NISA
  • iDeCo
  • 損益通算・損失繰越

それぞれ詳しくみていきましょう。

 

資産運用における税金対策①NISA

 

NISA(少額投資非課税制度)とは、株式や投資信託などの金融商品への投資で得た利益や配当金にかかる税金が非課税になる制度です。

 

通常、株式や投資信託の投資で発生した売却益や配当金・分配金に対しては20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用することでその税金がかかりません。

 

たとえば、100万円の投資で10万円の利益が発生した場合、本来は23,150円(10万円×20.315%)の税金が課せられます。

 

しかし、NISA口座の場合は非課税となるため、受け取れる金額が増えて節税効果が期待できます。

 

また、NISAの抜本的拡充・恒久化が図られ、2024年1月から新しいNISAが始まりました

 

金融庁の発表によると、新しいNISAでは、主に以下のような制度改正が行われました。

 

  • NISA制度の恒久化
  • 非課税保有期間の無期限化
  • 年間投資枠・非課税保有限度額の拡大

 

つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無期限化 無期限化
口座開設期間 恒久化 恒久化
投資対象商品 長期・分散・積立に適した投資信託 上場株式・投資信託など
対象年齢 18歳以上 18歳以上

 

制度改正によって柔軟な資産形成が可能となり、資産運用における税金対策としてますます注目を集めている「NISA」は非常に効果的だといえるでしょう。

 

資産運用における税金対策②iDeCo

 

iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)とは、自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産形成する年金制度です。

 

掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取れます。

 

iDeCoは、個人が資産形成をしやすいように、手厚い税制上の優遇措置が受けられることが大きな特徴です。

 

積立時・運用時・受取時のすべてのタイミングで税制優遇を受けられます。

 

  • 積立時:掛金は全額所得控除の対象
  • 運用時:運用益は全額非課税
  • 受取時:一括受取の場合は退職所得控除の対象、年金受取の場合は公的年金等控除の対象

 

このように、一般的に運用で得た利益には20.315%の税金が課されますが、iDeCoでは非課税となります。

 

節税効果が高い制度として大きな注目をあびているiDeCoは、加入するメリットが非常に大きい個人向けの年金制度であるといえるでしょう。

 

資産運用における税金対策③損益通算・損失繰越

 

「損益通算」とは、同一年に出た譲渡益などの利益と譲渡損などの損失を通算できる制度のことです。

 

たとえば、その年の株式の売却益が100万円、売却損が40万円の場合、100万円から40万円を差し引いた60万円が課税対象になります。

 

このように、資産運用で損失が発生して確定申告が必要ない場合でも、他の利益分と相殺して確定申告をすることで、所得税や住民税などの税負担を軽減する効果が期待できます

 

また、損失繰越(損失の繰越控除)とは、損益通算をして年間トータルで損失が生じたときに損失を出した年の翌年から最長3年間までその損失を繰り越して翌年以降の利益から控除できる制度です。

 

繰り越した損失は利益と相殺できるため、課税対象額を減らす効果が期待できます。

 

資産運用における税金についてよくある質問

 

資産運用における税金についてよくある質問

資産運用における税金についてよくある質問をまとめてみました。

 

資産運用に関連する税金の種類や仕組みについて疑問点がある方はぜひ参考としてご覧ください。

 

「不動産投資型クラウドファンディング」の分配金は雑所得ですか?

 

名前だけ聞くと不動産所得のように思えますが、雑所得の扱いになります。

 

アパートを人に貸している場合は不動産所得ですが、「不動産投資型クラウドファンディング」は匿名組合に出資する形になるので、分配金は雑所得になるのです。

 

雑所得は年間20万円以下なら申告不要ですが、ほかの所得と合わせて20万円を超える場合は申告が必要です。

 

「不動産投資型クラウドファンディング」の分配金が16万円であっても、例えばブログのアフィリエイト収入が5万円あった場合は合計で20万円を超えるので申告が必要になります。

 

資産運用はいくらから税金の申告・納税をしますか? 

 

給与以外の所得が20万円以下の場合には、申告不要制度が適用されるため、原則として確定申告は不要です。

 

ただし、年間の給与所得が2,000万円を超える場合や、給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合などは確定申告が必要となるため注意が必要でしょう。

 

投資信託の売却で20万円以下なら税金はかかりませんか?

 

年間の給与所得が2,000万円以下で、株式投資や副業など給与所得以外の所得が20万円以下の場合、確定申告は不要です。

 

ただし、「特定口座・源泉徴収あり」の場合は、20万円以下の利益でも課税されます。

 

利益が少額の場合は、「特定口座・源泉徴収なし」や「一般口座・源泉徴収なし」の利用を検討してみましょう。

 

株式や投資信託などの投資で税金かからない方法はありますか?

 

節税をしながら資産運用ができる制度もいくつかあります。

 

その代表例が、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)です。

 

株式や投資信託などの金融商品への投資によって得られた利益には、原則20.315%の税金がかかりますが、これらの制度を活用することで税金がかからず非課税となります。

 

金融庁の発表によると、2024年1月から開始された新しいNISAによって制度改正が行われました。

 

これによって、より柔軟な資産形成が可能となり、資産運用における税金対策として「NISA」は非常に効果的だといえるでしょう。

 

NISAとiDeCoは併用可能なため、目的に応じた使い分けが求められます。

 

資産運用で出た利益について確定申告不要なケースはありますか?

 

一般的に、給与以外の所得がある場合には確定申告が必要ですが、証券口座で「特定口座・源泉徴収あり」を選択して申告不要制度を利用した場合には確定申告を省略することが可能です。

 

年間の給与所得が2,000万円以下で、株式投資や副業など給与所得以外の所得が20万円以下の場合、確定申告は不要です。

 

詳しくは、国税庁の「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」をご覧ください。

 

PayPay資産運用で税金はかかりますか?

 

PayPay資産運用で運用した利益にかかる税金は、1年の取引をすべて合算し、経費を差引いてプラスになった場合、20.315%がかかります。

 

「PayPay資産運用」とは、PayPayアプリでPayPayマネーやPayPayポイント、クレジット(旧あと払い)を使って100円から取引できるPayPayが提供しているサービスです。

 

一般的に、ポイント投資では分配金・配当金や売却代金は現金で支払われるため、ポイント投資における運用益は課税対象となります。

 

まとめ|資産運用における税金の種類や節税を学んで賢く納税しよう

 

できれば納税額は低く抑えたいものですが、税金が高いということは逆にいえばそれだけの収入があったということです。

 

税金を払うことは必ずしもマイナスではありません。

 

国民の義務としてきちんと税金を払いながら、豊かな資産形成を目指していきたいものです。