【専門家コラム】大学駅伝
大学にとって知名度、認知度は非常に重要です。
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少子化傾向の高い日本における学校の学生獲得はますます厳しくなっているでしょう。知名度を高める方法の一つとして地上波によるスポーツのテレビ放送は、影響力がとても大きいですね。
その中でも筆頭に挙げられるのが箱根駅伝でしょう。
正式名称は東京箱根間往復大学駅伝競走と言います。1920年に早稲田、明治、慶應、東京高等師範(現.筑波大学)の4校で始まりました。第1回目の優勝校は東京高等師範学校です。2022年の年初の大会では20校が出場しています。今では30%弱程度の視聴率を獲得するこのテレビ生中継は、第63回の1987年から開始されました。その年の優勝校は順天堂大学です。初出場校は山梨学院大学でした。この駅伝大会は関東学生陸上競技連盟が読売新聞社と共催していますので、基本的には東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県に本部を置く大学が出場します。記念大会等では関西の大学や海外の大学も出ています。
毎年1月2日、3日に開催されるこの大会の前後は多くの方々が箱根駅伝の話題で盛り上がりますね。
書店でも箱根駅伝をタイトルに関した雑誌が多く並びますし、テレビでも展望が取り上げられます。大会翌日はテレビのインタビューが特集で組まれます。
山梨学院大学の活躍で新興系の大学も力を入れ始めます。
認知度が高くなかった大学も視聴率の高いこの大会で、名前を連呼されれば当然認知度は飛躍的に向上します。
1990年以降の初出場校は、
1994年 中央学院大学、関東学院大学
1998年 帝京大学
2001年 平成国際大学、國學院大學
2004年 城西大学
2009年 上武大学
2015年 創価大学
2016年 東京国際大学
2022年 駿河台大学
です。留学生にも入部してもらい、何とか予選会を勝ち抜いてテレビ生中継のある本戦出場を狙っています。
ただこの大会は前述の8県以外の他都道府県にとっては歯がゆいものでしょう。
そこで女子駅伝に力を入れる大学が出て来ました。
1983年に始まった全日本大学女子駅伝対校選手権大会は、第1回大会からテレビ放送が行われています。現在は25校が本戦に出場しています。女子は日本全国の大学が対象になりますから箱根駅伝に出る8県以外の他都道府県で力を入れる大学も出て来ます。視聴率は8%程度の様です。
2008年から出場の愛媛県の松山大学、2012年から出場の大阪芸術大学、2014年から出場の関西外国語大学はスポーツ系の推薦入試が有りますが、女子陸上や女子駅伝部を男子に比較し力を入れて入試の設定を行っています。
男子も女子も大学を卒業してからも実業団に進む学生が多いので、その後もニューイヤー駅伝などでも放送で大学名を呼ばれますから力を入れるのも当然ですね。
全国高等学校駅伝競走大会も都大路と呼ばれ、1979年から全コースの中継放送がNHKで行われています。箱根駅伝より全コースの中継放送は早いですが、箱根駅伝や女子駅伝がより注目されるようになり、高校も力を入れている事でしょう。
男子は箱根駅伝が圧倒的ですが、三大駅伝と言われ、出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走)と全日本大学駅伝(全日本大学駅伝対校選手権大会)も有りますから、8県以外の都道府県もこれら大会出場は狙っています。
出雲全日本大学選抜駅伝競走は、2015年以降では2015年に京都産業大学が10位に、2018年に立命館大学が7位に入っています。
スポーツによる大学の認知度向上は今に始まったわけではありませんが、少子化の影響は大きく高校生の取り合いは激しさを増す一方でしょうから、今回取り上げた大学駅伝は認知度向上の方法として今後も当分使われていくでしょう。
大学駅伝で新興勢力の大学のカギは監督・コーチでしょう。駅伝名門大学出身者の指導者としての招へいも行われていますね。駅伝部の設立、指導者の招へい、プログラムの強化、有望高校生の勧誘は新興各大学がこれからも行われていく手法でしょう。走る事の好きな高校生の選択できる大学は増えそうです。