「不動産クラウドファンディングに関連する法律を知りたい」
「不動産特定共同事業にはどのような種類のものがありますか?」
このような疑問や悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
近年、不動産クラウドファンディングは、不動産投資の新しい投資手法として注目を浴びています。
不動産クラウドファンディングのなかにもさまざまな種類が存在し、それぞれに適用される法律も異なります。
不動産クラウドファンディングへの投資を検討している場合には、それに付随する法律を理解することが必要です。
そこでこの記事では、不動産クラウドファンディングの法律やメリット・デメリットを解説します。
損をしてリスクを背負うことにならないように、しっかりと法律の目的や改正された背景などを理解しておきましょう。
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不動産クラウドファンディングに関連する法律
不動産クラウドファンディングに関連する法律には、主に2つ存在します。
- 不動産特定共同事業法(不特法)
- 金融商品取引法(金商法)
それぞれの法律の内容を簡単に知っておきましょう。
不動産特定共同事業法(不特法)
不動産特定共同事業法(不特法)は、複数の投資家から資金を集め、その出資金をもとに不動産を取引・運用することで発生する賃貸料や不動産売却益などの収益の一部を投資家に還元する「不動産特定共同事業」の仕組みを定めた法律です。
基本的には、不動産特定共同事業の適正な運営と投資家の保護に関しての内容を制定しています。
不動産特定共同事業法(不特法)で定められた一定の条件を満たせば、不動産クラウドファンディングの事業を運営できます。
現物不動産投資では一般の投資家にとっては参加しにくかったものの、不動産特定共同事業法(不特法)の制定や改正によって始めやすくなりました。
金融商品取引法(金商法)
不動産特定共同事業法(不特法)と同様、不動産クラウドファンディングに関連する法律で大切なのが、金融商品取引法(金商法)です。
金融商品取引法(金商法)では主に以下のことを目的に制定されました。
- 有価証券の発行や金融商品の取引を公正にする
- 投資家を保護する
- 経済を円滑化する
金融市場のグローバル化に対応するため、2006年に「証券取引法」を一部改正し、2007年に「金融商品取引法(金商法)」として成立しました。
クラウドファンディングは、投資家への金銭的なリターンの有無によって、「投資型クラウドファンディング」と「非投資型クラウドファンディング」に分類されます。
不動産クラウドファンディングは、不動産運用によって得た収益を投資家へ分配金として支給するため「投資型クラウドファンディング」に該当し、金融商品取引法(金商法)の規制対象になります。
不動産特定共同事業法(不特法)による3つの不動産特定共同事業形態一覧
不動産特定共同事業とは、「不動産特定共同事業契約」によって発生する収益を投資家へ分配する事業や契約の媒介をする事業のことです。
不動産特定共同事業は契約形態によって3つに分類できます。
- 任意組合型
- 匿名組合型
- 賃貸借型
それぞれの意味や特徴を説明していきましょう。
事業形態①任意組合型
不動産特定共同事業法によると、任意組合型とは「各当事者が出資を行い、その出資による共同の事業として、そのうちの1人または数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約」(不動産特定共同事業法2条3項1号)を意味します。
つまり、任意組合型とは、法律上の組合として任意組合(事業者)が対象不動産に出資・運用し、各組合員(投資家)に収益を分配する商品です。
不動産の所有権は投資家と不動産特定共同事業者にあり、登記簿にも投資家名義で記載されます。
事業形態②匿名組合型
不動産特定共同事業法によると、匿名組合型とは「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約」(不動産特定共同事業法2条3項2号)を意味します。
匿名組合型とは、投資家が匿名組合員で不動産特定共同事業者が営業者となり、その営業から生じる利益を各匿名組合員(投資家)と営業者(事業者)の出資比率に応じて分配する商品です。
不動産特定共同事業者に不動産の所有権や運営責任があり、投資家は不動産を所有できません。
不動産クラウドファンディングのほとんどが匿名組合型の契約形態です。
事業形態③賃貸借型
不動産特定共同事業法によると、賃貸借型とは「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため自らの共有に属する不動産の賃貸をし、又はその賃貸の委任をし、相手方が当該不動産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約」(不動産特定共同事業法2条3項3号)を意味します。
つまり、賃貸借契約または賃貸借の委任契約をもとに投資家が共同出資で購入した不動産を事業者に賃貸し、事業者は不動産運用で発生した収益を各共有者(投資家)に分配する商品です。
賃貸借型の商品はほとんど存在しません。
不動産特定共同事業法の許可を得るための要件
国土交通省が公表しているとおり、不動産特定共同事業法(不特法)によって、事業者が不動産特定共同事業を運営するためには国土交通大臣または都道府県知事の許可を得なければいけません。
不動産特定共同事業者は、事業内容や出資額によって、4つに大別されます。
事業者 | 認可に必要な出資額 | 事業内容 |
第1号事業者 | 1億円 | 不動産特定共同事業契約を締結して、不動産取引による収益を分配する事業者 |
第2号事業者 | 1,000万円 | 不動産特定共同事業契約の締結を代理または媒介する事業者 |
第3号事業者 | 5,000万円 | 不動産特定共同事業契約に基づいて委託運営された不動産取引業務を行う事業者 |
第4号事業者 | 1,000万円 | 不動産特定共同事業契約の締結を特例事業者の代理または媒介する事業者 |
国土交通大臣または都道府県知事からの許可を得るには、出資額以外にも一定の要件を満たすことが必要です。
クリアすべき不動産特定共同事業法(不特法)の主な許可要件は、以下の5つが挙げられます。
- 各事業者に必要な資本金額を満たしている
- 宅地建物取引業者免許を保有している
- 不動産特定共同事業を営むのに必要な財産的基礎があり、適確に事業を遂行できる人的構成がある
- 不動産特定共同事業契約約款の内容が基準を満たす
- 事務所ごとに業務管理者(不動産特定共同事業業務で3年以上の実務経験があるなど)を配置している
上記のように、不動産特定共同事業法(不特法)が制定されたことによって、法律で健全な事業運営ができると認められる要件をクリアした事業者のみが不動産特定共同事業を運営できることになりました。
不動産特定共同事業法(不特法)の法改正のポイント
不動産特定共同事業法(不特法)は、1994年6月に成立し、1995年4月に施行されました。
それ以降、3度にわたって改正が行われています。
- 平成31年(2019年)の改正
- 平成29年(2017年)の改正
- 平成25年(2013年)の改正
いずれも不動産クラウドファンディングに大きな影響を与えてきました。
投資家の保護や不動産特定共同事業の発展などを目指して、それぞれの時代にフィットした内容に改正してきたその変遷をたどっていきましょう。
平成31年(2019年)の改正ポイント
平成31年(2019年)の改正の大きなポイントは「不動産クラウドファンディングの活性促進施策の整備」です。
国土交通省によると、電子取引業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を目的に、主に改正されたのは以下の3点です。
- 「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の策定
- 不動産特定共同事業法施行規則の改正
- 不動産特定共同事業への新設法人の参入
平成29年(2017年)の法改正でも電子取引業務に関して言及されていましたが、平成31年(2019年)に「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」が策定されました。
これによって、クラウドファンディング事業者が遵守すべき具体的なルールが明文化され、不動産クラウドファンディング事業の活性化が推進されました。
また、不動産特定共同事業法施行規則の改正によって、資産の入れ替えを行いながら運用する対象不動産変更型商品の組成を認めることは長期的かつ安定的な投資商品の提供を可能にします。
さらに、従来は不動産特定共同事業登録の申請に直前3期分の決算書類の提出が必要だったため、不動産クラウドファンディングへの参入が事実上不可能でした。
しかし、平成31年(2019年)の法改正によって、新設法人でも一定の基準を満たせば参入できます。
このように、平成31年(2019年)の法改正では、より具体的な不動産クラウドファンディング枠組みや環境の整備が行われました。
平成29年(2017年)の改正ポイント
平成29年(2017年)の改正の大きなポイントは「小規模不動産特定共同事業の創設」と「クラウドファンディングに対応した環境の整備」です。
国土交通省によると、不動産特定共同事業の許可要件が地方事業者にとってはハードルが高かったことや書面での資金調達方法のみだったことを背景に、主に改正されたのは以下の3点です。
- 小規模不動産特定共同事業に係る特例の創設
- クラウドファンディングに対応した環境整備
- 良質な不動産ストックの形成を推進するための規制の見直し
空き家・空き店舗などが全国的に増加していたものの、許可要件の参入障壁が高かったことから、地方の不動産事業者が幅広く参入できるように「小規模不動産特定共同事業」を創設しました。
小規模不動産特定共同事業者とは、投資家1人あたりの出資額が100万円以下かつ全投資家から総出資額が1億円以内の小規模な事業者のことです。
また、投資家に交付する契約締結前書面などの紙データからデジタルデータでの交付を可能にするため、インターネット上での手続きに関する規定や業務管理体制に関する規定を整備しました。
このように、中小事業者や一般投資家への門戸開放や地方創生の推進を目指すことで、都市の競争率向上にもつながります。
平成25年(2013年)の改正ポイント
第1回目の法改正は、平成25年(2013年)に実施されました。
国土交通省によると、主に以下の6つの概要が法改正で制定されました。
- 特例投資家の範囲について
- 事業参加者の利益の保護を図るために必要な要件について
- 第三号事業を行おうとする者に係る不動産特定共同事業契約約款の内容の基準について
- 自己取引等の禁止の適用除外について
- 特例事業に係る届出関係について
- その他所要の改正
平成25年(2013年)の改正の大きなポイントは「倒産隔離型スキーム(特例事業)の導入」です。
「倒産隔離」とは仮に不動産特定共同事業者が倒産しても、特定の資産の流動化や資金調達を目的とするSPC(特定目的会社)の設立で不動産事業を分離することによって、投資家が不動産に投資した分のリスクだけを負担する仕組みです。
「適格特例投資家限定事業」が創設され、投資家の保護や資金の流動化が目指されたものの、税制面や制度面での課題は解決せずに普及しませんでした。
不動産特定共同事業を活用する3つのメリット
不動産特定共同事業を活用することで得られるメリットはいくつかあります。
代表的なメリットは、以下のとおりです。
- 不動産開発・改修で資金調達ができる
- まちづくりの当事者意識や関係人口の増加が実現できる
- 行政費用を抑制できる
それぞれ順番にみていきましょう。
不動産開発・改修で資金調達ができる
不動産特定共同事業を活用する1つ目のメリットは、不動産開発・改修で資金調達ができることです。
事業を運営するには、さまざまなリスクが考えられます。
- 経営戦略リスク
- 事業運営リスク
- 自己災害リスク
- 法務リスク
地方で行う事業や空き家などを活用した事業では、これらの事業リスクが高いことから、金融機関からの融資があまり期待できません。
不動産開発・改修の資金調達が難しいケースとして、自己資金不足で多額の融資が見込めないことやすでに多額の融資を受けているものの融資余力がないことなどが想定されます。
不動産特定共同事業を活用して小口資金での募集をすることで、リスク許容度の高い投資家から、事業への支援や共感の観点で資金調達が可能です。
また、SPC(特定目的会社)を活用した不動産特定共同事業では、対象不動産の収益性を目指した資金調達もできます。
まちづくりの当事者意識や関係人口の増加が実現できる
不動産特定共同事業を活用する2つ目のメリットは、まちづくりの当事者意識や関係人口の増加が実現できることです。
地域のシンボルとなるような地域密着型の不動産開発には、市民が積極的に関わることが不可欠です。
地域に関与する関係人口の増加や不動産の高い稼働率の維持などのニーズを満たすために、不動産特定共同事業を活用することで、地元市民や地域に関心の高い個人とっては投資家として継続的に不動産の運営状況を確認することが必要です。
それが、まちづくりに対しての当事者意識の向上や関係人口の増加につながります。
また、投資家にとっては利用者としての側面もあり、不動産の継続的な利用が稼働率の維持・向上や中長期的に安定した施設運営につながります。
行政費用を抑制できる
不動産特定共同事業を活用する3つ目のメリットは、行政費用を抑制できることです。
以下のように、地方自治体には不動産の活用にあたって財政面の問題点が考えられます。
- 歴史的価値のある建造物を保存活用したいが、ランニングコストを継続的にかけたくない
- 自治体の所有地を活用して必要な施設の開発を行いたいが、コストを抑えたい
このようなニーズに対応するため、事業コストが比較的小さくて小規模不動産でも事業対象になる不動産特定共同事業を活用することによって、民間資金の円滑な供給がなされ、行政費用を抑えることができます。
不動産特定共同事業を活用する2つのデメリットや注意点
不動産特定共同事業の活用には多くのメリットがありますが、デメリットがないわけではありません。
具体的なデメリットや注意点は、以下のとおりです。
- 元本保証や賃料収入の保証がない
- 利回りが低くなる傾向がある
それぞれ順番にみていきましょう。
元本保証や賃料収入の保証がない
不動産特定共同事業を活用する1つ目のデメリットや注意点は、元本保証や賃料収入の保証がないことです。
不動産には以下のようなリスクもあります。
- 不動産価値の目減りによる売却時の元本割れ
- 空室状況が続くことによる賃料収入の減少
そのため、現物不動産投資と同様、将来的に値下がりしないことや安定的な賃料収入が見込めることなどに関して慎重に選択することが必要です。
ただし、不動産特定共同事業は元本割れリスクを軽減する「優先劣後システム」や不動産会社がオーナーから物件を借り上げて第三者に転貸する「マスターリース契約」によって、一定の元本割れリスクからは守られています。
利回りが低くなる傾向がある
不動産特定共同事業を活用する2つ目のデメリットや注意点は、利回りが低くなる傾向があることです。
不動産特定共同事業を活用した不動産クラウドファンディングは、運用管理の手間がかからず、賃料収入を得られるメリットがあります。
しかし、運用管理業務をオーナー側に一任することでそれに比例してコストも増加するため、現物不動産投資と比較すると相対的に利回りが低くなってしまいます。
利回り以外にも、それぞれの投資目的や運用スタイルにあった選択が大切です。
不動産クラウドファンディングの法律に関連するよくある質問
不動産クラウドファンディングの法律に関連するよくある質問をまとめました。
不動産特定共同事業法(不特法)の内容や不動産特定共同事業の種類などに興味や関心がある人はぜひ参考にしてください。
不動産クラウドファンディングと不動産特定共同事業法(不特法)の法律にはどのような関係がありますか?
不動産特定共同事業法(不特法)が3度にわたって改正されたことで、不動産クラウドファンディングを運営する事業者が増加することにつながりました。
実際に一般社団法人日本クラウドファンディング協会が公表している「クラウドファンディング市場調査報告書」によると、不動産クラウドファンディングの市場規模は着実に拡大していることがわかります。
背景としては、出資金など比較的規模の小さい「小規模不動産特定共同事業」の創設など、不動産クラウドファンディングを利用しやすい環境が整備されたことが挙げられます。
小規模不動産特定共同事業とは何ですか?
小規模不動産特定共同事業者とは、不動産特定共同事業者のうち、「投資家1人あたりの出資額が100万円以下かつ全投資家から総出資額が1億円以内」の比較的小規模な事業者のことです。
ちなみに、不動産特定共同事業者とは、投資家から集めた資金で不動産を取得・運用して得られた収益を投資家に分配する事業者のことを意味します。
不動産クラウドファンディングと不動産投資信託(REIT)の違いは何ですか?
不動産クラウドファンディングがインターネット上で不特定多数の人から資金調達するクラウドファンディングなのに対して、不動産投資信託(REIT)は投資信託のひとつです。
つまり、金融商品であるかどうかの違いがあります。
不動産投資のために投資家から資金を集めることや少額から投資可能なことは共通点です。
しかし、不動産クラウドファンディングと比較した場合、投資信託であることから不動産投資信託(REIT)には以下のような特徴があります。
- 投資家から集めた資金をプロが投資・運用
- 原則いつでも換金できる
- 価格変動や為替変動リスクが受けやすい
また、不動産クラウドファンディングには元本割れリスクを軽減する仕組み「優先劣後方式」がありますが、不動産投資信託(REIT)にはそのような仕組みはありません。
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いは何ですか?
クラウドファンディングである点では共通していますが、不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いは、集めた資金の目的や用途です。
不動産クラウドファンディングでは集めた資金を不動産の購入に充当するのに対して、ソーシャルレンディングでは不動産の貸付に充当します。
そのため、お金を貸したい個人投資家とお金を借りたい事業者を仲介するソーシャルレンディングは「融資型(貸付型)クラウドファンディング」とも呼ばれています。
まとめ
不動産特定共同事業法(不特法)は、不動産特定共同事業の発展や投資家の保護などを目的に制定された法律です。
不動産投資型クラウドファンディングを活用しやすいように、これまでに複数回にわたって法改正が行われています。
法改正によって、事業者の参入障壁が低くなったこともあり、不動産投資型クラウドファンディングを提供する事業者は増加傾向にあります。
しかし、事業形態によって必要な条件が異なり、不動産クラウドファンディングの活用には注意点も少なくありません。
不動産投資型クラウドファンディングに関連する法律を見極めたうえで、多くの不動産クラウドファンディングのなかから自分に最適な投資先を選択することが大切です。
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