不動産投資を始めようと検討している人のなかには、不動産投資でどのような税金がどれくらいかかるのか気になる人もいるのではないでしょうか。
たしかに、不動産投資にかかる税金の仕組みや計算方法などは複雑でわかりにくい傾向があります。
しかし、不動産投資で成功するためには税金に関する知識が不可欠です。税金の知識がない状態で不動産投資をすると、思わぬ税金がかかることや適切に節税ができないことが起こりえます。
そこでこの記事では、不動産投資にかかる税金の種類・税率や節税につながる仕組みを解説します。
当メディアでは、無料会員登録をすることで、会員限定の記事コンテンツの閲覧やメールマガジンの受信ができます。メールアドレスとパスワードの設定で誰でも簡単にできるので、ぜひこの機会にご登録ください。
不動産投資にかかる12種類の税金一覧
不動産投資にかかる12種類の税金は以下のとおりです。
- 不動産取得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 固定資産税
- 都市計画税
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
- 個人事業税
- 消費税
- 相続税
- 贈与税
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を購入や贈与、譲渡で取得した場合に課せられる税金です。相続による不動産の取得には課税されません。
不動産取得税の計算方法は、以下のとおりです。実際の不動産購入価格ではなく、固定資産台帳に登録されている課税標準額である点に注意が必要です。
「不動産取得税額」=「不動産の課税標準額」×税率
総務省の公表によれば、税率は原則4%ですが、2027年(令和9年)3月31日までに取得した住宅および土地は軽減措置が適用されて3%となります。
印紙税
印紙税とは、契約書などの経済的取引で作成された書類に課せられる税金です。
不動産投資の場合は以下のような書類があてはまります。
- 売買契約書
- 建設工事請負契約書
- 金銭消費貸借契約書
契約書に記載された契約金額によって税額が異なります。国税庁の公表によれば、具体的な税額は以下のとおりです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減措置 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
また、国税庁が公表している「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」によれば、2014年(平成26年)4月1日〜2027年(令和9年)3月31日まで不動産売買契約書や建設工事請負契約書は軽減措置がとられています。
登録免許税
登録免許税とは、土地や建物の購入時の登記にかかる税金です。
登録免許税の計算方法は以下のとおりです。不動産取得税と同様、実際の不動産購入価格ではなく、固定資産台帳に登録されている課税標準額である点に注意しましょう。
「登録免許税」=「固定資産税評価額」×税率
また、所有権の保存・移転や抵当権の設定など不動産に関連するさまざまな登記の際にかかります。国税庁の公表によれば、それぞれの税率は以下のとおりです。
登記の種類 | 税率 |
土地の所有権移転登記 | 2% |
住宅の所有権保存登記(中古物件の購入) | 2% |
住宅の所有権保存登記(新築物件の購入) | 0.4% |
抵当権設定登記 | 0.4% |
固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産を所有している人にかかる税金です。固定資産税は市区町村に納める地方税です。
固定資産税は計算方法で求められます。
「固定資産税」=「固定資産税評価額」×税率
税率は原則1.4%ですが、納める自治体によって税率が異なることもあるため、注意が必要です。
都市計画税
都市計画税とは、市街化区域内に不動産を所有している人に対して課税される税金です。
都市計画税の計算方法は固定資産税と同じですが、税率の上限が0.3%と決められています。
自治体によって正確な税率は異なるため、軽減税率も含めて確認しておきましょう。
所得税
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。
不動産投資では、不動産収入から必要経費を差し引いた不動産所得と給与所得など他の所得との合計金額に対して所得税がかかります。
所得税は以下のように計算します。
「所得税」=「課税所得」×税率-「課税控除額」
所得税率は課税所得金額によって異なります。詳しくは国税庁の公式サイトをご覧ください。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,949,000円以下 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 427,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~3,999万円9,000円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税とは、地域社会の費用を分担するために、一定以上の所得がある人に対して課される税金のことです。
住民税には、以下のように所得割と均等割の2種類があります。
- 所得割:所得に応じた負担を求める
- 均等割:所得に関係なく定額の負担を求める
前年に一定の所得がある人全員が課される所得割の税率は一律10%(市町村民税6%、都道府県民税4%)です。
それに対して、均等割は自治体によって異なりますが、基本的には市町村民税と都道府県民税合わせて5,000円です。
復興特別所得税
復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興財源に充当するため、2013年(平成25年)から2037年(令和19年)まで所得税に上乗せして徴収される特別税です。
復興特別所得税の税率は、所得税に関わらず基準所得税額に対して一律2.1%かかります。
不動産投資では、運用中の利益と売却時の利益が発生したタイミングで課税されます。
個人事業税
個人事業税とは、個人で事業を営む人が都道府県に対して納める税金です。
不動産投資の場合、不動産売買業や不動産貸付業と判断されるような規模で事業を営んでおり、家賃収入が一定以上ある場合には個人事業税がかかります。
売上から必要経費を差し引いた所得金額が290万円以上ある場合に、納税義務が発生します。
そのため、個人事業税の計算方法は以下のとおりです。
「個人事業税」=「収入」-「必要経費」-「事業主控除290万円」×税率
個人事業税の税率は業種によって異なります。
消費税
消費税も不動産投資でかかる場合があります。
ただし、決して不動産投資家全員が納税する義務があるわけではありません。
前々年度の課税売上高が1,000万円を超えている場合に、課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。
不動産投資では、事業としての建物の売買や事業用の家賃に対しては、消費税がかかります。しかし、土地の売買や居住用の家賃などは非課税取引として課税されることはありません。
相続税
相続税とは、財産を相続した場合にその財産にかかる税金です。不動産を相続した場合も同様に課税対象です。
ただし、相続税はどのような場合でも課されるわけではありません。相続財産の総額から債務や葬式費用などを差し引いた金額が、基礎控除額を上回っている場合にのみかかります。
基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。
「基礎控除額」=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続財産の総額が基礎控除額よりも下回っている場合は相続税の申告・納税の必要はありません。
贈与税
贈与税とは、個人から財産を贈与された場合にかかる税金です。不動産を贈与された場合も同様に課税対象です。
1月1日から12月31日までの1年間で受け取った財産額の総額が110万円を超えると、贈与税の申告・納税が必要です。
贈与税は、以下のように計算して求めます。
「贈与税」=(1年間に受け取った財産価額の総額-110万円)×税率-控除額
贈与財産の総額が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。
不動産投資が税金対策になる理由
不動産投資が税金対策になる理由を以下の4つの観点から解説します。
- 所得税の節税
- 住民税の節税
- 相続税の節税
- 贈与税の節税
所得税の節税
不動産投資では、家賃収入から得られた収益から必要経費を差し引いた金額(不動産所得)に税金がかかります。
もし不動産投資で赤字(損失)が出た場合でも、給与所得など他の所得の黒字(利益)と相殺することで、課税所得を少なくして所得税を節税できます。これが損益通算です。
たとえば、不動産所得で100万円の赤字がある場合、課税所得は500万円(600万円-100万円)になります。
本来課税されるはずだった金額が600万円だったことを考えると、かかる税金が軽減されていることがわかります。
このように、不動産投資で発生した赤字を黒字と合算できるため、節税をしたい場合は損益通算を利用しましょう。
住民税の節税
所得税同様、住民税も節税効果が期待できます。
それは、住民税も所得税などの税金と同じように所得金額をもとに算出されるため、所得税が少なければ住民税も少なくなるためです。
また、損益通算によって納税すべき金額が少なくなることがあります。
ただし、節税につながるのは不動産所得が赤字の場合のみです。あくまでも不動産投資の目的は不動産収入を得ることです。節税目的で始めたものの、不動産投資ではマイナスになってしまうことがないように注意しましょう。
相続税の節税
相続税も不動産投資で節税効果が見込めます。
それは、同じ金額の現金を相続するよりも、不動産で相続する方が相続税を軽減できるからです。
現金を相続する場合、財産の評価基準である相続税評価額は現金と同額になります。
しかし、不動産を相続する場合、時価の70%を基準にして相続税を算出します。これは財産を現金で相続するよりも、不動産で相続する方が評価額を低くできることから、納税すべき相続税を安く抑えることが可能です。
このように、相続税評価額を上手に利用することで高い節税効果が期待できます。
贈与税の節税
相続時精算課税制度を利用することで、贈与税も節税できます。
国税庁の公式サイトによれば、相続時精算課税制度とは60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫へ生前贈与をする場合、2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。
2,500万円を超える贈与がある場合、2,500万円を超えた分にだけ一律20%の贈与税がかかります。2,500万円までは課税対象外です。
たとえば、5,500万円の財産が祖父母から孫に贈与される場合、3,000万円(5,500万円-2,500万円)にのみ贈与税がかかります。
ただし、贈与財産の価格次第では税金が高くなることや暦年贈与と併用ができないことなどリスクもあるため、注意しましょう。
不動産投資で所得や税金を計算する際のシミュレーション手順
不動産投資で所得や税金を計算する際のシミュレーション手順は以下の3ステップです。
- 不動産収入を計算する
- 経費を計算する
- 不動産所得を計算する
ステップ1:不動産収入を計算する
まず、不動産収入を計算します。不動産投資による主な収入には以下のようなものが含まれます。
- 家賃収入
- 礼金
- 更新料
- 共益費・管理費
- 駐車場代(家賃以外で駐車場を貸して収入を得ている場合)
ステップ2:経費を計算する
次に、経費を計算します。不動産投資で経費計上できるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できることが条件です。
不動産投資にかかる主な必要経費は以下のとおりです。
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 損害保険料(火災保険料、地震保険料)
- 減価償却費
- 修繕費
- 修繕積立金
- 管理委託手数料
ステップ3:不動産所得を計算する
最後に不動産所得を計算します。
不動産所得とは、土地や建物などの不動産を貸し付けることで得た所得です。計算方法は以下のとおりです。
「不動産所得」=「総収入金額」-「必要経費」
不動産所得が黒字であれば、所得税や住民税の課税対象になります。
一方で、不動産所得が赤字の場合でも、損益通算を利用することで給与所得などの他の所得と合算してその赤字を相殺できます。
不動産投資の税金に関連するよくある質問
不動産投資の税金に関連するよくある質問を以下にまとめました。不動産投資でかかる税金や節税効果を詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
不動産投資は節税になりますか?
損益通算や減価償却費の計上などによって、不動産投資が節税になる場合もあります。
損益通算とは、不動産所得が赤字でも給与所得など他の所得の黒字と相殺できる制度です。損益通算によって課税所得を減らせるため、節税効果につながります。
また、減価償却費とは、購入時に一度ですべて計上せずに法定耐用年数に応じて複数年に分割して経費計上する費用のことです。減価償却によって、実際には黒字でも会計上は赤字になり、節税効果が見込めます。
不動産投資で得た家賃収入に税金はかかりますか?
不動産投資で得た家賃収入すべてに税金がかかるわけではありません。
家賃収入から必要経費を除いた金額(不動産所得)に対して、所得税や住民税などの税金が課税されます。不動産収入ではない点に注意しましょう。
まとめ|不動産投資にかかる税金や税金対策を理解したうえで始めましょう!
不動産投資では購入時・運用中・売却時すべての段階で税金がかかります。
不動産投資で成功を収めるためには、どのような税金がどれくらいかかるのかを理解しておく必要があります。
不動産投資の本来の目的は不動産収入の増加のため、目的が節税になってはいけませんが、適切に税金対策をすることは効果的です。
当メディアでは、無料会員登録をすることで、会員限定の記事コンテンツの閲覧やメールマガジンの受信ができます。メールアドレスとパスワードの設定で誰でも簡単にできるので、ぜひこの機会にご登録ください。