不動産投資の法人化を検討している人のなかには、以下のような疑問や悩みを抱えている方も少なくないでしょう。
「不動産投資の法人化とはどのようなものですか?」
「不動産投資の法人化することのメリットやデメリットを知りたいです」
「不動産投資で法人化するべきタイミングや目安は?」
実際に不動産投資を法人化するとさまざまなメリットもあります。
そこでこの記事では、不動産投資の法人化とはどのようなものかの基礎的な部分からメリット・デメリットや注意点、法人化する手順まで解説します。
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不動産投資の法人化とは?
不動産投資の法人化は、不動産の運営主体を個人から法人に切り替えることを指します。
法人化することで、投資家はより効果的な税務計画を立てられます。
また、法人化により不動産投資のリスクを分散させることも可能です。
ただし、法人化には費用や手続きがかかるため、専門家のアドバイスを受けながら検討することが重要です。
不動産投資で法人化する7つのメリット
不動産投資で法人化する7つのメリットは以下のとおりです。
- 法人と個人の税率の差による節税効果が期待できる
- 相続する際の節税対策になる
- 経費計上できる範囲が広がる
- 会計上の赤字(欠損金)を10年間も繰り越せる
- 減価償却費を自由に調整できる
- 資金調達の選択肢が増える
- 決算月を任意で決められる
法人と個人の税率の差による節税効果が期待できる
不動産投資をする場合、法人化することで個人の税率との差による節税効果が期待できます。
個人の場合、所得税と住民税を合わせた税率は最大55%ですが、法人の場合は実行税率が20〜30%台です。
また、地方法人特別税率の廃止も法人化のメリットです。
このように、法人化することで、不動産投資の収入を効果的に活用できます。税率の差を最大限に活かし、経済的なメリットを享受しましょう。
相続する際の節税対策になる
相続税は、個人の不動産が相続される際に課税されます。
しかし、法人が所有する不動産は相続税の対象外であり、節税対策となります。
個人が所有する不動産の評価額に応じて相続税が増えますが、法人所有の不動産は相続人が変わっても所有権が変わらず、相続税を回避できます。
ただし、法人が不動産を事業用として利用している場合や、相続人が法人の役員である場合などが条件です。
相続税の負担を軽減するためには、専門家に相談することが重要です。
法人所有の不動産を活用することで相続税を回避できるため、節税対策として検討する価値があります。
経費計上できる範囲が広がる
個人の場合は不動産売買の利益は譲渡所得として分類され、他の事業の損失とは通算できません。
対して、法人税では不動産の譲渡も事業活動と見なされ、他の事業の損失と合算できます。
具体的な例を挙げると、不動産の利益が100万円で他の事業の損失が50万円だった場合、法人税の課税対象額は50万円です。
法人は他の事業の損失によって税負担を軽減できます。
経費計上の範囲が広がる法人税の特徴を活かし、経営戦略を考えることが重要です。
会計上の赤字(欠損金)を10年間も繰り越せる
個人事業主の確定申告では3年間、法人の場合は10年間、赤字を繰り越せます。
これにより、法人は黒字の年でも、過去の赤字と相殺して節税効果を得られます。
赤字を翌年以降に計上できる繰越損失は、将来の利益を見越して投資や事業拡大を行う際には大きなメリットです。また、経済的な困難に直面した場合にも役立ちます。
経営者や経理担当者は、繰越損失を活用して節税策を検討しましょう。
減価償却費を自由に調整できる
個人の場合、減価償却費は全額計上されますが、法人の場合はその年ごとに調整が可能です。
金融機関から融資を受ける場合には黒字である方が有利なため、減価償却費を自由に調整できることは融資を受ける際にも効果的です。
この調整は経営戦略の一環として活用され、企業の財務状況を改善し、将来の成長につなげられます。ただし、適切な根拠や記録の保持、税務専門家との相談が必要です。
資金調達の選択肢が増える
個人は融資や借入、補助金などの資金調達手段がありますが、法人は資金調達する選択肢が広がります。
例えば、投資型クラウドファンディングや株式の増資も可能です。
法人が融資以外の方法を活用するメリットは、柔軟な対応力があることです。
さまざまな方法を使えるため、状況に合わせた対策ができます。新商品やサービスの開発、事業拡大や新規事業の立ち上げにも挑戦できます。
資金調達は企業の成長と発展に重要な要素です。適切な選択をするためには、資金調達方法を理解し、状況に応じた選択が必要です。
決算月を任意で決められる
個人で不動産投資を行う場合、通常は1月1日から12月31日までが業績集計の期間とされ、決算書の作成や税金の申告が行われます。
しかし、法人として登記すると決算月を自由に設定でき、節税対策や柔軟な申告が可能です。
例えば、収益が年末に集中する場合、法人登記により収益を分散させることで税金の負担を軽減できます。
また、個人は3月15日までに申告を行いますが、法人は決算後2ヵ月以内に申告と納税を行えます。
不動産投資で法人化する5つのデメリットや注意点
不動産投資で法人化する5つのデメリットや注意点は以下のとおりです。
- 設立手続きの手間がかかる
- 法人の設立や維持にコストがかかる
- 長期譲渡所得の優遇税制が利用できない
- 赤字でも法人住民税の支払いが必要になる
- 法人としての収入は自由に使えない
設立手続きの手間がかかる
法人設立には多くの手続きが必要で、書類作成や会社印作成、公証役場や法務局への提出など、さまざまな手間がかかります。
最短でも1週間はかかるので、注意が必要です。
まずは法人設立に必要な書類を作成し、正確に詳細を記入する必要があります。また、会社印も作成しなければなりません。会社印は公的な文書に使用するための印鑑であり、公的な場面で必要です。
さらに、公証役場や法務局への書類提出も必要です。これらの機関では内容や手続きの正確性を確認し、手続きを進めます。
法人設立は重要な一歩ですが、時間と労力が必要です。しかし、正確な手続きを踏むことで安心してビジネスを展開できます。
法人の設立や維持にコストがかかる
法人の設立や維持にはさまざまなコストがかかります。
最低限の費用としては、定款認証や登録免許税、収入印紙などがあります。
また、専門家に依頼する場合は手数料も必要です。専門家は設立時だけでなく、運営の際にもサポートを提供してくれるため、継続的な報酬が発生します。
ただし、費用は会社によって異なるため、具体的な金額は専門家に相談することをおすすめします。
長期譲渡所得の優遇税制が利用できない
不動産の売却には、長期譲渡所得の優遇税制を利用できる場合と利用できない場合があります。
不動産を5年以内に売却すると一般的な所得として最高39%の税率が課されますが、5年間よりも長く所有してから売却すると20%の税率で長期譲渡所得として扱われます。
ただし、法人は優遇税制を利用できません。
5年を超えて物件を売却する場合には、個人の場合と比べると税率が不利になるため、注意が必要です。
赤字でも法人住民税の支払いが必要になる
法人が赤字でも、法人住民税の支払いは避けられません。
法人住民税は、従業員数や資本金額に基づいて算出される均等割の支払いが必要です。
赤字の場合でも毎年税金を納めなければならないため、法人にとってはデメリットとなります。
法人住民税は、「法人税割」と「均等割」で構成されており、赤字の場合は法人税割は課税されないこともありますが、均等割は毎年必ず発生することで7万円程度の住民税を納めなければいけません。
法人にとっては経営状況に関係なく毎年一定の税金を納める必要があり、負担となります。
赤字でも法人住民税の支払いが必要な理由を理解し、適切な財務計画を立てることが重要です。
法人としての収入は自由に使えない
法人の収入は個人の収入と異なり、自由に使えません。
経費を引いた家賃収入は社長の給料として受け取れず、会社の剰余金として計上されます。
剰余金を勝手に使うと業務上の横領となり、法的な問題に発展しかねません。剰余金を使う場合は適切な手続きを踏む必要があり、給与として支給された額は個人の収入として扱われます。
法人の収入の使い方には厳格なルールがあり、財務状況を正確に把握し、専門家の助言を受けることが重要です。
適切な知識と対策を持つことで、安心して経営ができるでしょう。
不動産投資で法人化するべきタイミングや目安
課税所得が900万円以上の時が法人化の目安です。なぜなら、課税所得が900万円以上になると税率が33%に引き上げられるからです。この課税所得には不動産事業だけでなく、給与所得も含まれます。
サラリーマンであれば、年収総額がおおよそ1,500万円前後を目安とすることができます。
不動産投資を個人で始めて途中から不動産を増やす際に法人化することも可能ですが、負担が発生することに注意が必要です。
ただし、これらはあくまでも目安であり厳密には人によって異なるため、自分の所得や投資スタイルに最適なタイミングを探しましょう。
不動産投資で法人化する手順【6ステップ】
不動産投資で法人化する手順は、以下の6ステップです。
- ステップ1:法人の種類を決める
- ステップ2:会社概要を決める
- ステップ3:印鑑を作成する
- ステップ4:定款の作成と認証を行う
- ステップ5:登記書類を作成し法務局へ提出する
- ステップ6:法人の開業届を提出する
ステップ1:法人の種類を決める
法人化を考える際には、まず法人の種類を決めることが重要です。
株式会社以外にも合同会社、合資会社、合名会社など複数の選択肢があります。
各法人には手続きや費用、税制、要件などの違いがあります。
自社のビジネスモデルや将来の展望に合わせて最適な法人の種類を選ぶことが重要であり、税制や費用面も考慮しながら判断することが必要です。
ステップ2:会社概要を決める
会社設立時には、会社の概要を明確にすることも必要です。
会社の概要として決めることは以下のようなものがあります。
- 会社の商号
- 本店の所在地
- 資本金の額
- 発起人
- 事業目的
これらの要素を適切かつ慎重に決めることで、会社の基盤をしっかりと築くことができます。
ステップ3:印鑑を作成する
法人の設立には、代表印、銀行印、社印、実印の4つの印鑑が必要です。
これらは法人登記や契約書で使用される重要なものです。
代表印は法人を代表して使用され、銀行印は銀行との取引に使用されます。
社印は契約書に押され、法人のイメージを高めます。
実印は法人登記の申請時や高額な取引をする際の契約書などで使用する重要な印鑑(印章)です。個人の実印と同じく、印鑑登録が必要です。
ステップ4:定款の作成と認証を行う
定款は、法人の基本的なルールを定めた文書であり、会社法に基づいて作成されます。
定款の作成は難しく手間がかかりますが、司法書士に依頼することで正確かつ適切な定款を作成可能です。ただし、その費用は30万円程度かかります。
定款の作成は法人設立に欠かせない重要な手続きであり、公証人の認証を受けることで法人の運営での基本的な規則を明確にします。
司法書士に依頼する際には、費用や手続きを事前に確認しましょう。
ステップ5:登記書類を作成し法務局へ提出する
登記申請手続きは煩雑で、司法書士に依頼することが一般的です。
自分で手続きする場合は、必要な書類を正確に作成し、法務局へ提出する必要があります。
必要な書類は以下の7点です。
- 登記申請書
- 収入印紙を貼る台紙
- 登記すべき事項
- 定款(紙または電子)
- 取締役の就任承諾書
- 払込証明書
- 印鑑届出書
これらを正確に作成し、法務局へ提出することで登記手続きが完了します。
重要な手続きなので、慎重に進めることが必要です。専門家のアドバイスもおすすめです。
ステップ6:法人の開業届を提出する
最後に、法人の開業届を提出します。
法人化のためには、法人登記だけでは足りず、いくつかの書類が必要です。
法人登記には以下の書類が必要です。
- 登記簿謄本
- 定款の写し
- 株主名簿の写し
- 貸借対照表
- 出資者の氏名と出資金額を証明する書類
これらを正確に提出することで、法人化の手続きが完了します。
皆さんは必要な書類を揃えて、スムーズな開業を目指しましょう。
不動産投資の法人化に関連するよくある質問
不動産投資の法人化に関連するよくある質問を以下にまとめました。不動産投資の法人化を検討している方はぜひ参考にしてください。
不動産投資の法人化のスキームにはどのようなものがありますか?
個人の不動産の所有者が不動産から得られる所得を会社に分散する方法は以下の3通りのスキームがあります。
- 管理委託方式:不動産オーナーが物件を会社に委託し、所得を分散させる
- サブリース方式:不動産オーナーが物件を会社に貸し出し、収益を上げる
- 不動産所有方式:不動産オーナーが物件を会社に移転し、所得を分散させる
オーナーは目的に合わせて最適なスキームを選ぶべきです。専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断しましょう。
サラリーマンが不動産投資で法人化するタイミングの目安はありますか?
サラリーマンが不動産投資を法人化するタイミングは、給与所得が900万円以上の場合が目安とされています。
900万円を超えると税率が43%になり、法人化すると34%となるため、節税効果が得られます。
ただし、あくまでも目安であり厳密には個人の所得や投資スタイルによって異なるため、最適なタイミングを探しましょう。
副業禁止の場合に不動産投資の法人化は違反ですか?
不動産投資は副業として認められていない場合もあります。
また、法人化して行う場合は就業規則に注意が必要です。副業が認められている場合でも、会社役員になることが禁止されている場合や法人設立が制限されている場合があるかもしれません。
あるいは副業を禁止していない場合でも、法人設立を禁止するケースがあるでしょう。
まずは、自分の会社の就業規則やポリシーを確認しましょう。
まとめ|適切なタイミングで不動産投資の法人化を検討しましょう!
不動産投資を法人化することで節税対策や資金調達の選択肢が増えることなどは大きなメリットです。
その反面、手続きの手間やコストがかかることや優遇税制が受けられないこともあります。
また、法人化するタイミングは課税所得が900万円以上のときが目安とされていますが、実際には個人の所得や投資スタイルによって異なります。
そのため、適切なタイミングで不動産投資の法人化を検討しましょう。
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