不動産投資の手法である不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディング。クラウドファンディングによって投資家を集める不動産投資クラウドファンディングと、融資・貸付型のソーシャルレンディングにはさまざまな違いがあります。
この記事では、不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いについて、メリットとデメリットを比較しながらご紹介します。
不動産投資クラウドファンディング | ソーシャルレンディング | |
法律 | 不動産特定共同事業法 | 複数の金融に関わる法律 |
仕組み | 不動産運営を手掛ける事業者 | 第二種金融商品登録事業登録者及び貸付業者 |
利回り | 3〜8% | 10% |
担保の確実性 | 高い | 低い |
節税 | 税制上の優遇措置が受けられない | 税制上の優遇措置を受けられる |
リスク | 元本割れリスク、倒産リスク | 信用リスク、為替変動リスク、担保価値低下リスク |
市場規模 | 数千万円~数百億円 | 200億円 |
裁量権 | 自由に案件を選べる | 自由に案件を選べる |
こんな人におすすめ
- 不動産投資クラウドファンディング:リスクは小さく、居住用住宅や商業施設に投資したい人向け
- ソーシャルレンディング:安定した配当金を得たい人向け
【概要】不動産投資クラウドファンディング・ソーシャルレンディングの違い
不動産投資クラウドファンディングとは、投資資金をインターネット上で募るクラウドファンディングによって、複数人の投資家で一つの不動産に投資する投資手法のことです。一方で、ソーシャルレンディングもクラウドファンディングによって投資家を募り、複数人の投資家で一つの不動産に投資する投資手法のことです。
一見、どちらも同じ投資手法に見えますが、不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングには法律や仕組みに違いがあります。ここからは、法律と仕組みの違いをご紹介します。
法律|不動産特定共同事業法・複数の金融に関わる法律
- 不動産投資クラウドファンディング:不動産特定共同事業法
- ソーシャルレンディング:複数の金融に関わる法律
不動産特定共同事業法に則って運営されている不動産投資クラウドファンディングは、投資家と事業者が匿名契約を結んだ上でインターネット上で取引します。集めた資金は他に貸し付けることはなく、必ず不動産投資に使われます。
一方で、複数の金融に関わる法律に則って運営されているソーシャルレンディングは、運用事業者が第二種金融商品登録事業登録者です。また、貸付をするため貸金業登録もしています。
それぞれの仕組み|委託事業者が異なる
- 不動産投資クラウドファンディング:不動産運営を手掛ける事業者
- ソーシャルレンディング:第二種金融商品登録事業登録者及び貸金業者
不動産投資クラウドファンディングサービスを提供しているのは、不動産運営を手掛けている事業者です。不動産運営を手掛ける事業者が、クラウドファンディングによって資金を募り、集まった投資家の資金をもとに投資します。投資した不動産で得たインカムゲインとキャピタルゲインは、配当額に応じて投資家に分配されます。
一方で、ソーシャルレンディングは業者が資金提供して金利を得ることが目的です。そのため、不動産管理業者ではなく貸金業者が運営しています。
【メリット・デメリットを比較】不動産投資クラウドファンディング・ソーシャルレンディングの違い
ここまでご紹介した通り、不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングには、法律や仕組みに違いがあります。このことから特徴にも複数の違いがあり、メリットとデメリットが異なります。
ここからは、メリットとデメリットから不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングを比較しましょう。
①利回りの高さ|ソーシャルレンディングのほうが高い
- 不動産投資クラウドファンディング:3〜8%
- ソーシャルレンディング:10%
利回りの高さで比較すると、ソーシャルレンディングの方が高いといえます。ソーシャルレンディングの方が利回りが高い理由は、海外向けの融資案件も多数取り扱っているからです。
不動産投資クラウドファンディングの利回りは3〜8%ですが、3〜5%程度が相場で利回りが8%の案件は多くはありません。また、ソーシャルレンディングのように利回りが10%の案件はほとんどないため、利回りで比較するとソーシャルレンディングに分があります。
②担保の確実性|不動産投資クラウドファンディングのほうが高い
- 不動産投資クラウドファンディング:高い
- ソーシャルレンディング:低い
担保の確実性で比較した場合には、不動産投資クラウドファンディングの方が高いといえるでしょう。なぜなら、不動産投資クラウドファンディングは多くの場合、優先劣後方式をとっているためです。
優先劣後方式とは、不動産投資で万が一損失が発生し元本割れが起きてしまう際に、クラウドファンディング事業者が一定金額までの損失を負担する方式です。そのため、損失が出にくいことが不動産投資クラウドファンディングのメリットであるといえるでしょう。
一方で、ソーシャルレンディングは貸し倒れや返済の遅れが発生した場合に、投資家の収益を確保する契約を結んでいません。
そのため、万が一損失が発生した場合には、投資家の自己資金に影響を与えかねません。
③節税効果|ソーシャルレンディングのほうが高い
- 不動産投資クラウドファンディング:雑所得
- ソーシャルレンディング:配当所得
節税効果で比較を行った場合には、ソーシャルレンディングに一日の長があります。
不動産投資クラウドファンディングで得た収入は、マンション経営での不動産所得としては扱われず、全額が雑所得として扱われることが理由の1つです。
一方で、ソーシャルレンディングで得た収入は全て配当所得として扱われます。税制上のメリットを持たない雑所得とは違い、配当所得では一部金額の税額を控除する配当控除が受けられることがメリットといえるでしょう。
④リスク|不動産投資クラウドファンディングのほうが低い
- 不動産投資クラウドファンディング:元本割れリスク、倒産リスク
- ソーシャルレンディング:信用リスク、為替変動リスク、担保価値低下リスク
投資を行う上で必ずついて回るリスク面では、不動産投資クラウドファンディングが優位といえるでしょう。
不動産投資クラウドファンディングでの主なリスクとしては、元本割れリスクと倒産リスクが挙げられます。
それらのリスクこそあれど、元本割れリスクに対しては優先劣後方式をとっているように、リスクを低減するための工夫を凝らしていることが理由です。
一方のソーシャルレンディングでは利回りが高い代わりに、それらリスクの管理は投資家自身が行う必要があります。
損失を発生させてしまうリスクを少しでも減らしたい場合には、不動産投資クラウドファンディングを選ぶとよいでしょう。
⑤市場規模|ソーシャルレンディングのほうが大きい
- 不動産投資クラウドファンディング:数千万円~数百億円
- ソーシャルレンディング:200億円
市場規模で比較した際には、ソーシャルレンディングの方が大きいといえるでしょう。
しかし、不動産投資クラウドファンディングの市場規模の拡大には目を見張るものがあります。
ごく最近に登場し、毎年大きく市場規模を拡大している不動産投資クラウドファンディングは、今後も市場を急拡大する可能性があります。
出典:クラウドファンディング協会「クラウドファンディング 市場調査報告書」
⑥裁量権|どちらも同じくらい
- 不動産投資クラウドファンディング:好きな案件を選べる
- ソーシャルレンディング:好きな案件を選べる
個人の裁量で自分好みの案件に投資ができることから、裁量権についてはどちらも同じ程度であるといえるでしょう。
投資において、慎重に投資案件を選ぶことは非常に重要です。
特に、元本割れリスクに対する保証のないソーシャルレンディングでは、成功すると考えられる案件を見極めることは非常に重要であるといえるでしょう。
不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングのどちらを選ぶかを含め、投資先の選択は慎重に行いましょう。
まとめ
不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングには、仕組みや事業者の違いからさまざまな違いがあります。それぞれの特徴を把握し、自分に合った方法で不動産投資に挑戦しましょう。